私たちの見解
バークシャーは、多くのバリュー投資家が日本市場で過去に課題に直面したことのある難しい分野を選んだ。また、注目すべきは、単独の一社ではなく、複数の5社に投資したこと。個別企業間の差がなく同質的であって、優劣の識別がバフェットにとっても難しいことを示唆している。実質は日本の商社ETFへの投資。こういったアプローチをとることは珍しい。
素材・エネルギー事業の現在の循環的な弱さが、今後の値上がりをもたらすリターンの源泉の大きな要。しかし、それに賭けるのであれば、世界的には他にも多くの投資の選択肢がある。
日本の商社の特質的なアップサイド?
確かに株価は低いがそれは安いのか?過去商社株は簿価前後で上下し安く安定してきた。そして日本市場全体よりリターンが高くなったのは1980年以降では2000年代前半のコモディティバブルの時期だけだった。株価評価の調整ではなく、コモディティ市場がピークに向かったからだった。
ROAは一桁台前半で上下。トレンドはなく上下変動を繰り返す。とすれば割安であることには、新しいものはなく、むしろ彼らが安いのにはそれなりの理由があると考えるべきではないか。例えば
不確実な資本配分効果によるコングロマリット・ディスカウント
商品市場と個別のエネルギーやコモディティの採掘プロジェクトの不確実性は構造的に変わらず将来も続くこと。
大規模で古い組織であり、代々継承される多くの組織的な遺産を抱えており、組織改革が困難。
エネルギーの国家安全保障による政府統制による水面下の影響。
長期的な投資機会は、コモディティではない新分野である。しかし、そこでの見通しは決して明らかではなく構造的な課題がある。
まず、差別化できる競争優位性があるのかはっきりとしないし、新規分野への投資実績はあまり良くない。各社とも同じような横並びでもある。
また日本では、企業文化や規制の問題から、米国のプライベート・エクイティのような経営チームを送り込んで執行を入れ替える経営改革を通じたアプローチは現実的には行われない。
そして、日本ではプライベートエクイティやベンチャーキャピタルが活躍しており、商社よりも幅広く深い専門性を持っている。 商社の機能はこれらより遅れた二番手以降のポジションであって、また、商取引ルートを開拓代行してくれるメリットと、チャネル占有による収益と事業展開上の副作用の懸念とが共存している。
一方、同時にバークシャーが共同で取り組む機会を追求することが示唆された。5つの商社のうち、どの商社がオファーを受けのるかはわからないが、バフェットの日本株投資においての特異的な部分だ。今後、これがどのように展開し、そしてどの程度の影響があるかは不確実である。意表を突くようなディールは検討していると思われ、今回の投資案件には重要なテコかつ重要な触媒となりそうだ。しかし疑問を提起するなら、こういったイベントによるリフトアップは連続し持続し得るのかになろう。
過去を振り返ると、先に触れたが商社が高いリターンを得たのは、過去50年間で2回だけで、それは80年代後半の日本の不動産バブルと00年代前半のコモディティバブル。しかも前者では市場を下回っていた。
つまり、商社株は、コモディティ価格が牽引する循環的で外部依存の一時的イベントが大きなドライバーだった。構造的に固有要因としてリスクプレミアムが持続低下してきたことは一度もなかった。
外部の市場変動の影響度が大きく、内部からの構造変化の力があってもかすんででしまう。
我々が興味を持つのは、より本質的な部分の変化と持続的投資リターンの上昇。
そして、組織構造の変更、コモディティ事業の分離とスピンオフ。それは、資本配分の規律と内部の現金と資本の流れ、そして資本コストをより正確に明確にすることになり、本質的かつ構造的な固有要因のリスクを引き下げうる。
しかし、コモディティから得られるキャッシュが主たる新分野への投資原資であることを考えると、難しいかもしれない。つまり、これらは相互に依存している不可分な部品。そうだとすれば、最終的にはコモディティによって資本コストが決定されることになる。それがより根源的かつ基底的なキャッシュフローを社全体として左右するからだ。